《MUMEI》

それから約1時間後、ヨッチャン達と走った峠に来ていた。

2往復位走り、下の駐車場に入った。
近くの自販機でコーヒーを買い、バイクの横に座り込んだ。

タバコに火を付け、空に向かって煙を吐き出した。

ここまで、どう走ったのか、どんな道だったのか…
捕まった後の記憶がほとんどない…
捕まった事さえ夢のような感覚になっていた。

「ウウ〜〜〜ン」
俺の麻痺した頭を醒ますかのように、12時のサイレンが鳴り響いた。

ポケットから携帯灰皿を取り出すと、一枚のメモ用紙が出てきた。
朝、貰った電話番号の書いてある紙だった。
右手で握り潰して、今は使われてない花壇に置いた。
ライターで火を付け、プリクラも一緒に燃やした。
貰った時に上の写真はチラッと見たが、他は全然見ていないままだった。
赤い炎に包まれ、スルメイカのように丸くなっていった。
燃え尽きても、うっすらと残像が残っていた。
足で揉み潰し、砂で埋めた。

せっかく貰った写真だが、持っていても邪魔になるだけだ。
ましてや、エリカに見られると困る。

(エリカ…)
ふと、エリカの顔が頭に浮かんだ。
携帯を取り出すと、やはりメールが届いていた。

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