《MUMEI》

歌穂子さんは、うつ向いている。


「何だ? 歌穂子は友達も好きなヤツもいないのか?」

「ゆ、祐介さん…」


思わず口を挟んだ私を見て、祐介さんは不思議そうな顔をした。


「? 何?」


(何って…)


私が何も言えないでいると、歌穂子さんが顔を上げた。


大きく深呼吸した歌穂子さんは、きっぱりと言った。

「友達も好きなヤツもいるよ」


祐介さんは、軽い調子で『へぇ〜、どんなヤツ?』と訊いてきた。


「小柄で目が細くて、鈍感なヤツ」


「へ?」


祐介さんは目を丸くした。

ドン!


「あんただよ!バカ祐介!」


歌穂子さんは祐介さんを突き飛ばし、真っ赤な顔で叫んだ。


「えっと…ドッキリ?」


私達を見つめる祐介さんを見て、お子様二名以外は首を横に振った。


「え? …マジ?」


今度は頷いた。


「じゃあ、後は二人で話し合いだよね」


「そうね、私達お邪魔よね」


父と華江さんの言葉に、私と歌穂子さんのママは頷いた。


『ケーキ食べに行こうか』と父が言うと、友君と美穂子ちゃんが歓声を上げた。

「ま、待ってよ!」


祐介さんの言葉には、誰も耳を貸さなかった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫