《MUMEI》 歌穂子さんは、うつ向いている。 「何だ? 歌穂子は友達も好きなヤツもいないのか?」 「ゆ、祐介さん…」 思わず口を挟んだ私を見て、祐介さんは不思議そうな顔をした。 「? 何?」 (何って…) 私が何も言えないでいると、歌穂子さんが顔を上げた。 大きく深呼吸した歌穂子さんは、きっぱりと言った。 「友達も好きなヤツもいるよ」 祐介さんは、軽い調子で『へぇ〜、どんなヤツ?』と訊いてきた。 「小柄で目が細くて、鈍感なヤツ」 「へ?」 祐介さんは目を丸くした。 ドン! 「あんただよ!バカ祐介!」 歌穂子さんは祐介さんを突き飛ばし、真っ赤な顔で叫んだ。 「えっと…ドッキリ?」 私達を見つめる祐介さんを見て、お子様二名以外は首を横に振った。 「え? …マジ?」 今度は頷いた。 「じゃあ、後は二人で話し合いだよね」 「そうね、私達お邪魔よね」 父と華江さんの言葉に、私と歌穂子さんのママは頷いた。 『ケーキ食べに行こうか』と父が言うと、友君と美穂子ちゃんが歓声を上げた。 「ま、待ってよ!」 祐介さんの言葉には、誰も耳を貸さなかった。 前へ |次へ |
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