《MUMEI》
夏休みA
久しぶりの佐伯の部屋。
以前なら前ぶれもなくいきなり遊びに来ていたが今はそういう訳にはいかなくなった。

――それは佐伯に恋人が出来たからで…。

まあ、なに?
普通俺らの年じゃーさ、いくら付き合ってる奴いたって恋人よかダチ優先じゃん?。
中には金魚のフンみてーに女くっつけてまわる奴もいるけどさ。
いくら女が部屋にいたってダチは喜んであげるのが礼儀。
まあ、佐伯もさ、本当はそうしたいみたいなんだけど長沢が許してくれねーみたいで。
俺に毎日電話してきては日高と遊びて〜よって溜め息混じりに嘆いている。
――そう、俺らの友情の邪魔をする正体。
それは佐伯の恋人。
―――長沢貢の存在



佐伯は冷蔵庫から俺が好きな銘柄の缶ビールを持って来てくれた。
「プレミア〜ムモ〇ツ!乙!最高!頂きま〜す!」
ゴクゴクゴク…ぷはあ〜!最高ww
「ザラハイどうぞヒダちゃ〜ん!」
「サンキュー!聖ちゃ〜ん」
佐伯は俺専用の灰皿を差し出してくる。
つか佐伯は煙草吸わないから本当に俺専用。
佐伯もビール開けてゴクゴクぷは〜した。
「今日から夏期講習なんて頑張るなあ、長沢の奴」
佐伯手作りのキムチチャーハン食べながらビールが進みまくる。
「おかげでやっと解放されたっつーかよ、さすがに毎日一緒に居んのは疲れたよ…」
「だよな〜、アイツ絶倫っぽいもんな〜、つかさ、佐伯すっかり長沢に女にされたんじゃね〜の?
もう女に興味わかね〜んと違う〜?
ヒャッハッハッハッ!!」
久しぶりに見る佐伯。
なんっつ〜か色っぽくなった。
何処がって言われると答え様がないけどなんとなくね。
「バカにすんな、俺は本当は女の方が好きなんだ!
――もしハルヒィスが付き合ってくれるなら…速攻長沢と…別れるし…」
とか言いながらも最後の方の言い方は自信なさげに尻つぼんだ。

「――な、久しぶりに上映会しね?」
「―――最初からそのつもりで来たんだろ、エロ日高! 」


佐伯は酔っ払った足取りでクローゼットに向かう。

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