《MUMEI》

『あんvあんvあんvあん…』
巨大液晶テレビいっぱいに広がるハルヒィスの乱れる姿。
いや〜!
ここで観るAVは迫力があって最高っす!
「これ長沢と視たことあるん?」
「アイツこ〜ゆうのキライだからよ〜、はー…久しぶりに視た…やっぱハルヒィス可愛いなあ…」
可愛い顔してたって所詮男子、佐伯。
確り雄の顔でガン見している。
「なんでキライなんだ?」
「このてのって演技丸出しで鼻につくんだってよ〜、
わざとらしいアエギは逆に萎えるんだってさ」
パリッとポテトチップかじりながら、へ〜っと感心。
と同時についでに凹む。
童貞な俺にとって本当のアエギと演技のアエギなんか区別つかね〜し。
つかこれが全て演技だとするとハルヒィスで何十回も抜いている俺と佐伯はアホも良いところ……
いや、男は所詮アホな生き物なんだ!
夢見て生きる、妄想に生きる主人公なんだ!
「長沢の夏期講習、いつまで?」
「うん、9日まで…」
うすら返事に近い佐伯の返答。
あ〜佐伯も妄想の中の主人公になってきたか?
長沢の塾の夏期講習は泊まりがけで行うらしい。
今頃は伊豆の宿泊所でま〜だ勉強してんだろ。
つか…俺もそろそろ少しやらなきゃなぁ…、学期末考察ギリチョンだったのよ。
「久しぶりに泊まってこーかな、いい?」
「なんだよ、泊まるつもりで来たんだろ?つかこのまま何日かいろよ」
「サンキュー…はあ…」

嬉しい嬉しい嬉しい!
佐伯の家は勝手知ったる我が家同然!
住み易いし飯にも困らない!
それに佐伯はなんだかんだ言いつつ俺よか遥かに成績が良いからついでに宿題も捗るし分からないままにしてる所教えて貰える。

加えて佐伯はあの一流俳優、佐伯陸の弟様だ。
身元のはっきりしている処に泊まる事は俺の両親的にも大歓迎な状態だし、お袋が佐伯陸さんの大ファンな為一緒について来たがる事もしばしばだったりする。

あ、佐伯陸の弟だっつー事実はいちいち面倒だからって理由で学校じゃ俺しか知らない。

…佐伯は…この事は…長沢には話たんだろうか?

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
ケータイ小説サイト!
(C)無銘文庫