《MUMEI》

「ん、頭痛い。」
頭を押さえて、昨日の出来事を思い出す。
だが残念な事に、何も思い出せない。
「早く学校行かなきゃ。」
背伸びしながらチラッと時計を見る。
そして葵の表情が固まった。
時刻は11時45分。
文句なしの遅刻だ。
「最悪だ。」
溜め息と一緒にボヤくと、風呂場に向かった。
洗面所の鏡と向かい合って、コンタクトレンズを外す。
目が充血している。
「今日はメガネちゃんか。仕方ない。」
ぶつぶつ言いながら、シャワーを浴び始めた。

結局、遅刻しているというのに、30分もシャワーを浴びた。
「昼休みには着くよ。うんうん。」
髪を乾かしながら、自分を慰める。
のそのそと居間に戻って制服に着替えると、携帯と財布だけ入ったバッグを持って部屋を出た。
「お、いい天気。」
空を見て少し微笑むと、少し早足でバス停に向かった。
5分歩いてバス停が見えて来るのと同時に、バスがウインカーをあげて減速しながら葵の横を通過していく。
だが横断歩道の信号は赤。
「ヤバ…」
葵の焦りも虚しく、バスが車線に戻って走り去って行った。
無情にも、ようやく信号が青になる。
肩を落とし、バス停で時刻表を確認すると、30分待ちだった。
「今日は厄日ですか。」
バス停のベンチが冷えていて、太ももの裏が冷たい。
何故か孤独感が胸を支配した。

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