《MUMEI》

『何分前に発作をおこしましたか?』


『痙攣はありましたか?』



『持病は?』




『いつも飲んでいる薬は?』



『名前と年齢は?』


『保険証お願いします』










――そんな類の質問を次々とかなり冷静な態度で事務的に投げつけられた。



その間に他の救急隊員の男が惇に酸素マスクを被せ、ひっきりなしに話かけている。






傍について声もかけさせて貰えない、いや成すすべが無い俺は惇のバッグから保険証を探すのが精一杯だった。





あっという間に病院に着くと入り口に医師や看護師が待機していて真っ直ぐに緊急処置室に運ばれた。




惇が寄ってたかって状況確認されている中、救急車の中でされた質問を看護師にまた一から投げかけられる。




『呼吸が浅い』




『血圧が低い』




『意識が戻らない』





――そんな不安にさせる台詞が次々に飛び交う。





俺は外に出ている様に言われ、処置室を出た。








いてもたってもいられず俺は裕斗に電話をした。




惇が倒れた事はある意味俺よりも仲の良い裕斗に伝える事は当然な事だし、できればとんで来て俺達の傍にいてやって欲しいと思ったから。




―――しかし連絡は取れなかった。






またかけなおす間に惇に意識が戻って中に呼ばれる可能性があるかもしれないと俺は諦めて病院の中に戻る。





それから30分位して処置室から看護師が一人出てきた。



『意識戻りましたよ』



その台詞に弾かれた様に俺は惇の傍に駆け寄る。


『惇!!』




――真っ青な顔で虚ろ気に天井を見つめる惇……。



俺の声が聞こえないのか何の反応も示さない。


『惇!!』




もう一度俺は言った。


『――こちらへ来て貰えますか?』




始めに入り口で出迎え主導権を握り惇を処置していた医師にそう言われた。





俺は処置室脇のカンファレンスルームと書いてある小さな密室に促された。

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