《MUMEI》

「好きなのね、あの人のこと」
「うん」

目の前にいるのは元カノだというのに、そんなの忘却の彼方というような顔で嬉しそうにこっくりと頷かれる。いいんですけどね。可愛いけどもね。ホントどうなのソレ

「よかったね。おめでとう」
「ありがとう」
「上手くいくといいね」
「うん。たぶん大丈夫」

他の恋愛よりも不安をいっぱい抱えているはずなのに、はっきりとそう言える彼に、見当違いの嫉妬をしてしまいそうだった。そういえば私は、あの人のことを好きだってこんなに胸を張って言えてたのかなとふと思った。思えばあのとき、あの人が私を本当に愛してくれてるのかということだけに関心を持っていた気がする。
だから、ちょっとだけ意地悪してみたくなってたずねた。

「あっちは銀二を愛してくれてるの?」

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