《MUMEI》

桜花が 消えて 数十年の 歳月が流れた日…


冬風は 桜花の櫻の木の前に 佇む 一人の男に 気付いた。


…あれは…
慌てて 走り寄れば、精悍な鬼の姿になった風花で あった。


「冬風!」
あの頃のままの、笑顔で ある。


「風花!立派になったな。」
自分より 背の高くなった 風花を 見上げた。


風花は 櫻の木を 見つめながら 言った。

「母上、今 帰りました。」


「冬風、待たせたな、母上の 病を治す秘薬を 持ち帰ったぞ。」


「?? まさか、あれは お前を 鬼の里に 還す為の 嘘のはず…」
冬風は 信じられぬ という顔をした。


「冬風、それが…

我が一族の御党首は 殺生が嫌いで

人間や動物の生気を奪わず、ある草花を 栽培して 生気を集め

それを精製して 皆で 分け与え食しておりました。

私は その 草花の生気を 濃くする薬を 生み出す事に 長い歳月を 費やし…

このほど 完成したのです。」
と 風花は 嬉しそうに言った。

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