《MUMEI》

数日ぶりにシフトが重なったアルバイトは妙に嬉しそうな顔をしていた。
ずーっと、にこにこにこにこにこにこにこにこ、酔っぱらいに絡まれても後輩のバイト仲間がミスをしても、単に俺に挨拶をするときでさえ、ヤツの頬はゆるみっぱなしだ。

「英田先輩、なんかあったんですか?」
「さあ?」

後輩の女の子がそっと俺に聞いてくるが、俺にもよくわからない。わかるけど、わからない。
他のアルバイトたちも、ヤツの今日の変なテンションにはさすがに疑問を覚えているらしい。確かに、数日前までコウモリと幽霊が好みそうなどんより曇ったオーラを纏って、時折頭を抱えてみたり、そうかと思えば元気になったりしていた挙動不審なあいつに、何の疑問も抱いていなかったのは、多分その理由を知っている俺くらいだ。
でも、どうやらヤツを懊悩させていた問題には桃色の決着が着いたらしい。

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