《MUMEI》 「母さん、そんな頻繁に来なくていいよ。それより姉さんと話すべきだ。」 今、一番滅入っているのは彼女だし、……なんて、口実だ。 俺は一人になりたい。 最近はやっと歩けるようになり、退院の時期も決まった。 限られた時間で家や、色んな事から離れたかった。 「だって、お花がね……」 母さんは毎日新しい花を生けてくる。 そういえば、フラワーアレンジメントを習っていた母さんにしては色みが地味だ。 かすみ草を毎日、大量に抱えている。 「何か食べる?林檎とか。」 「今日はもう大丈夫だから。喉が渇いたから何か買ってくる。」 母さんは献身的だ。 姉貴と上手く話せないから逃げているのだ。 「じゃあ小銭を……」 ポケットの中から母さんは百円玉を出す。 中から小銭の他に飴玉が出て来た。 ……予感が、した。 もう、会わないって誓ったのに……。 せめぎ合う思考に反し、身体はなんて素直なんだろうか。 前へ |次へ |
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