《MUMEI》
新タナ悩ミ
「また今日も谷口くん休みだね……」

「最近すごく多くない?聞いても曖昧な答えしかしてこないし」

「答えづらいことなのかなぁ」

「……例えば?」

「う〜ん……。引っ越しとか」

「それ最近したって言ってたじゃん」

「じゃあ何?ご両親関係とか?」

「わかんないよ……。谷口くんって謎多すぎ!!」

「じゃあ憶測でもの言うのやめたら?」

「い…伊久子っ」

実際、誰もが心配していた。学校には特に連絡はなく、あっても理由はわからなかった。

久しぶりに出て来ても、途中で帰ったりして、とても忙しそうに見えた。

流理自身、限界を感じていた。

そろそろ学校から呼び出されて事情を聞かれるかもしれない。

その理由に有理を持ち出すのはなんとなく嫌だった。

だけど自分は病気のようには見えないだろう。

やっぱり正直に話すべきなんだろうか?

もしかして薄々感付いてきている人もいるかもしれない。

顔があまりにも春日有希と似すぎだ。下手したら……、ってな感じで。

絶対無いとは言い切れない。

有理に聞いても、『好きにしろ。春日有希はお前だろ』とか言われそうだし。

――オレが春日有希…か……。

呼び出された時考えても遅いんだよな。

あ――…こういう時に相談できる友達が欲しいよ……。相変わらず寂しい人間だなぁ、オレ。

「谷口」

「永井さん……。久しぶりだね」

「うん。…てかあたし達はテレビで春日くん見てたからあんまり久しぶりって感じじゃないんだけどね」

そう言うと永井さんは笑った。

「……なんで最近学校来ないの?た、楽しくない…とか?」

「違うよ。ちょっとね」

「またそれ」

「?」

「ちょっとねって、いっつもそればっかり」

「……ゴメン」

「謝るようなことしてるの?」

今日は永井さん、意地悪だなぁ。

やっぱり怒ってるのかな?でも話す気にはなれない。

自分で決めたい。自分のことだから。

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