《MUMEI》

「わっ! な、なに?」

羽田が慌ててキョロキョロ辺りを見回す。
凜も驚いたのか、目を大きくしている。

「あー、またか」

レッカは顔をしかめ、ため息をついた。

「なに、このブザー」

「警報だよ」

「警報?」

「そ。また、上でマボロシが大量発生。ったく、せっかく数減らしたってのに。どっから来るんだ、あいつら……」

「で、あんたはここにいていいわけ?」

凜はレッカを見て言った。
レッカは考えるように首を傾げ「さあ……」と答える。

「マボロシの数にもよるけど……」

そう言いながらレッカは立ち上がり、部屋から出た。
それに続いて羽田と凜も出る。
そして壁にあるモニターに目をやった。
そこには赤くAの文字が点滅していた。

「Aって……?」

「警戒レベルがAってことだな」

羽田の問いにレッカは答える。

「それって、どうなの?」

「……けっこう、やばい」

「じゃ、行ってきなよ。わたしたちはここにいるからさ」

凜が言うと、レッカは迷うように二人の顔とモニターを見つめ、やがて頷いた。

「すぐ戻ってくるから、こっから出るなよ」

「はいはい」

「気をつけてね」

「おう!」

力強く応えながら、レッカは駆け出して行った。

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