《MUMEI》 《…》 「もしもし」 私は緊張しながらもう一度呼び掛けた。 《こんばんは、蝶子ちゃん》 ようやく言葉を発した相手は、私と同じように、小声だった。 《今は、実家?》 「はい」 《そう…》 そう言って、また相手は無言になった。 「あの…どうかしたんですか?」 沈黙を破ったのは、私だった。 《明日、…家に来てくれない?》 「それは…」 父と華江さんが許さないと思った。 《じゃあ、東京駅で待ち合わせは?》 「すみません、明日は父に車で送ってもらうんです」 私は会ってもいいが、父が許さないだろうと思った。 《俊彦君と三枝の事で、話があるの。電話じゃなくて、直接話したいの …お願い》 「…」 (おばあちゃんと二人なら、いいよね) 電話口の祖母の必死な口調を聞いて、私は断る気にはなれなかった。 「わかりました」 《本当に? あの、太郎さんは、…大丈夫なの?》 「説得してみます。あの…」 《何?》 私は祖母に、唯一不安だった光二おじさんの現状について質問した。 祖母は、『会ってから話すわ』と答え、明日は祖母だけが行く事を強調した。 前へ |次へ |
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