《MUMEI》

『…いいよ。』




“もう付き合って1ヶ月以上経つもんね…。
そろそろ…ってなるのは、普通だよね?
私も、吉沢さんが好きだし断る理由なんてない…。”




と思ったけど、見てるDVDに全く集中出来ない!




字幕についてけない…。




どうしよう…。




緊張するよ!!




泊まっていくって事はお風呂入るよね〜?




歯ブラシは?
着替えは?
ヒゲソリは?




ウチ何も無いよ…。




買いに行くのかな〜?




それともDVD見終わったらソッコー飛び掛かってきたりして……。




今日ブラとパンツお揃いのちゃんとしてたっけ?

化粧は落としたいな…。

カレーの隠し味にニンニク入れちゃったよ…。

匂うかな…。




って吉沢さんもカレー食べたじゃん!




はぁ〜。私、何テンパってるんだろう……。




とにかく落ち着け私…。




吉沢さん…私が“初めて”だって知ったらヒクかな…。




っていうか…言うべき?


黙ってればバレないもの?


いや〜バレるよね?


いやっ?バレない?


わかんな〜い!!


どうすんの!!?


助けてぇ〜!!!!!




『咲良?…どうしたの?』




『…ううん。何でもない。』





『そう?DVD終わったよ!面白かったな〜切って!』




『…うん。』




テレビを切って静まり返った部屋には、時計の音だけが響いていた…。




『よしっ。俺、風呂入ろ!先入っていい?』




『…えっ?……うん。
……でも、着替えないよ。……どうする?』




『あぁ〜いいや。明日、出勤前に、家に寄って着替えるから。』




『………じゃなくって寝る時の服が……。』




『大丈夫!俺、寝る時、全裸だから(笑)。』




『ぜっ!ぜんらって!?
ゴホッ……ゴホッ…。』




『はははっ!
冗談だって〜。この前、買い物行った時に買った、スウェット持って帰るの忘れてったのあっただろ?
あれ着るから、出しといて。』




『あぁ〜スウェットね。
……でも…下着は?』




『ノーパン上等!!』




『…ノ……ノーパンって!?……ゴホッゴホッ。』




『何なんだよ?さっきから。分かったぞ(笑)。
一緒に風呂に入りたいんだろ〜!?』




『違います!!』




『入りたかったら、いつでも入ってきていいよ〜!』




『入りません!!』




“はぁ〜。疲れる…。
吉沢さんがお風呂に入ってる間に、ベッド片付けとこう…。”




『…咲良〜?咲良〜?
シャンプーどれ〜!?』




『もうっ!!裸で出てこないでね!!シャンプーは一番左のやつだから!!』




『は〜い。』




“やだな…。こんなんじゃ心臓がいくつあっても、足りないよ……。”




『咲良〜!出たよ〜!
次すぐ入るだろ?』




『…うん。入る。』




私は、急いでお風呂に入ることにした…。




湯ぶねに浸かってても、
“吉沢さんが入ったお風呂に入ってる…。”
とか考えてしまう……。




『私は、変態か!?』




1人でノリツッコミ…。




バカだ…。




すっごく不安なのに、思わず顔がニヤけてくる…。




今日で、本物の“恋人”になる!?




ウフッ…。




25歳…。
初めての経験をする…。
相手は大好きな吉沢さん。

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