《MUMEI》

ラウンジで新聞を見ながら辺りを伺っていると、私の読み通り、さっきのウェイターの美青年を見つけた。

手招きをすると彼がすぐにやってきてくれたが、こちらに気づくなりあの美しい瞳を大きく見開いて驚いていた。

でもそこはホテルのラウンジという事で、彼は臆せず冷静にオーダーを聞いてきた。

「はい、何でしょうか」
「コーヒー、ココじゃなく後で部屋にお願い出来るかな?」
「かしこまりました」

しばらくすると、彼が伝票を持ってきた。

「サインをお願いします」

彼が差し出した伝票にルームナンバーとサインを入れると、添えられたその手を優しく握りながら、彼の耳の側に顔を近づけた。

「あっ///」
「このルームサービス、キミが来て欲しいんだが…お願い出来るかな」

小声でそう言って彼に微笑みかけると、彼は頬も耳も真っ赤にさせて驚いたような目で俺を見つめていた。

= = = = = = = = = = = = = = = =

(…僕ご指名か…もしかしてゲイの人なのかな?)

だってさっき手を握ってきて…しかもキスされるんじゃないかってぐらい顔を側に近づけて来たし。

(それとも!さっきのもしかして怒ってるとかι…外国の人は恐いなぁ)

そんな事をブツブツ言いながら、例のイケメンの部屋の前に着くとドアをノックした。

「…あの…お待たせ致しました」
「あぁ…どうぞ」

(でも、日本語話せる人で良かった…英語とか絶対に無理だし…)

= = = = = = = = = = = = = = = =

「…あの…お待たせ致しました」

あのラウンジの美青年がルームサービスを運んで来たのを確認すると、鍵を外してドアを開けて彼を招き入れた。

「あぁ…どうぞ」

彼が部屋に入ってきてテーブルをセッティングしている間、ソファーに座りながらその後ろ姿をじっと眺めていた。

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