《MUMEI》 午後出勤の俺は、ショップが開くと同時に店に入った。 店内を見渡すが12Rが見当たらない。 キョロキョロしていると店員さんが声を掛けてきた。 「いらっしゃいませ〜、おはようございます」 「あっ、おはようございます」 「何をお探しですか?」 「ZX12Rがあるって聞いて来たんですが」 「はい、ありますよ。こちらにどうぞ」 奥の整備部屋に案内してくれた。 「まだ、整備段階で、店頭に出してないんですよ」 俺は初めて12Rの実物を見た。 一目見た瞬間、【ビビッ】と来る物があった。 俺は、その場に立ち尽くしていた。 「よかったら、跨ってみて下さい。」 「じゃあ、ちょっとだけ…」そう言って跨ってみた。 身長178センチの俺で、足付きは丁度かかとまでぴったりだった。やはり実物はカッコイイ。 ステップに足を上げライディングポジションを取ってみる。 車体が大きい事もあり、窮屈な感じはない。今のZXR400よりも、かなり楽に感じる。 (これなら乗れそうだ…) 俺がバイクを降りると 「エンジン掛けますね。」 『キュルル ドル〜ン ドゥッ、ドゥッ、ドゥッ、ドゥッ』 アクセルを捻ると『ドル〜ン』と言う音と共にタコメーターの針が一気に振れる。 キャブとは違い、一瞬の待ちも無く吹け上がる。 (俺はこの有り余るパワーを物にできるのか…?) 前へ |次へ |
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