《MUMEI》
祖母の話
私は、待ち合わせ場所の東京駅内の喫茶店に入った。

入る前から、私に手を振る祖母が見えていたので、私はすぐに祖母の座るテーブル席に向かった。


「…ごめんなさい。あの…」


私は祖母と、…私の後ろにいる父を交互に見た。


今朝、私は『おばあちゃんと二人で会って話したい』と父と華江さんに話した。

父は、『必要無い!』と怒鳴ったが、私が何度も頼むと、渋々許してくれた。


ただし、父と一緒にという条件付きだった。


華江さんは、友君を連れて駅の近くにあるデパートに行っていて、話が終わり次第、合流する予定だった。

「…こんにちは」


「どうも」


頭を下げる祖母にそっけない挨拶をする父。


私は、祖母の向かいに座り、父は私の隣に座る。


いつもは子供のような父だが、今日は雰囲気が違っていた。


水とおしぼりを持ってきた店員に、私と父は、アイスコーヒーを頼んだ。


向かいにいる祖母の前には、既に紅茶の入ったカップがあった。


(おばあちゃん、コーヒーだめだもんね…)


私が祖母を見つめると、祖母は、『飲み物が揃ったら話を始めます』と言った。

すぐに、アイスコーヒーが運ばれてきた。

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