《MUMEI》

「まだまだ暑いわね」


「そうで…」

「そんな話をするためにコソコソ蝶子ちゃんに電話したわけじゃないでしょう?」


和やかな空気を作ろうとする私と祖母に対し、父は攻撃的だった。


(やっぱり、連れてこなければ良かったかな…)


私は、父を連れてきた事を後悔し始めていた。


(かわりに、華江さんに付き添い頼めば良かったな)

その事に朝気付かなかった事に後悔した。


「光二の事は、謝ります。
本当に、申し訳ありませんでした」


「…そんな事をされても、俺は光二を許しませんよ」

頭を下げる祖母に父は冷たく言った。


「許さなくて結構です。
あの子はそれだけの事をしましたから。

あの子とは、光二とは親子の縁を切りました」


「「え?」」


祖母の意外な言葉に、私と父は驚いた。


確かに、光二おじさんにはたくさん傷付けられた。


しかし、まさか祖父母が実家で同居している、唯一の息子を勘当するとは思わなかったのだ。


「まさか、蝶子ちゃんに老後の面倒みてほしいとか言わないですよね?」


「言いませんよ」


父の言葉に、祖母は苦笑した。


「でも、大丈夫なんですか?」

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