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ケータイ専用オークション

《MUMEI》
哀しみのセレナード
「2500円もしたのよ?」
女は紅潮した顔でしばらく唇をぶるぶる震わせていたが、やがて急に力が抜けたように肩を落とすと、今度はさめざめと泣き始めた。
「『夜の梅』の名前の由来を知ってる?切り口の小豆が梅のように見えるからよ。小豆は北海道産、寒天は長野県の伊那地方か岐阜県恵那地方の指定工場のものしか使われないわ。それだけとらやの原料は厳選されていると言うことよ。私がどれだけ楽しみにしていたかわかってるの?」
「悪かったよ。あのときは友達が来て、ついビールのつまみに…」
「ビールのつまみ!!」
男の発言に、女は天を仰いだ。
「ありえない。全くありえないわ。お茶も入れずにようかんを食べるなんて、一体どういう神経してるの?こんな人を一時でも愛してしまった自分が許せない。近寄らないで!子供の親権については法廷で話し合いましょう」
「ビールに意外と甘いものが合う事は君も知っているだろう?この前だって、二人でチョコをつまみに黒ビールを飲んだじゃないか。そう興奮しないでくれよ…」
「チョコとようかんは別物だわ」
女は冷徹な口調で言い放った。

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