《MUMEI》

2階に向かう階段の途中、

壁側にいくつものクリスマス飾りがぶら下がっていた。

もう、何年前のクリスマスか分からない。

母は嬉しそうに飾りをつけていた。

まだ、オレが実家に住んでいた頃だ。

オレは高校生だったかもしれない。

母の背では届かない場所の飾りつけは、
オレが手伝った。

ブツブツ文句を言いながら、

無理な体勢で、無理矢理な場所に飾りをつけた。

だから、今も仕舞われる事なく残っているのだろう。


何年も前のクリスマス。

新しいツリーが玄関先に飾られていた。

何の前ぶれもなく、見たことのないツリーが、

アルバイトを終え、夜中に帰宅した玄関先に飾ってあった。

何年も前のクリスマス。

オレはクリスマスという祝いを理解していなかった。


兄とオレは、母と一緒に帽子を作っていた。

黄色の色画用紙を、不器用な手つきでハサミをいれ、

表面を金色や銀色のシールで飾りつけした。

皆で、お手製の帽子を被り

ケーキを食べた。

オレが思い出せる限りの、

1番古いクリスマス。

もう、玄関先でツリーは灯らない。

ツリーは持って帰る事は出来ないから、

いつか、

大きなツリーを買おう。

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