《MUMEI》

長い1日がはじまる。


電気は完全に止まっている為、閉めきられた部屋は完全なる闇が広がっていた。


母の部屋に入り、手探りでベランダの窓を目指す。


立て付けの悪い雨戸は、ギシギシと鈍い音を鳴らしやがて、

徐々に

朝の日射しが部屋一面に差し込みだす。


今まで、
オレ達の心を支配していた闇が、

少しずつ晴れていく様に。

真っ直ぐに突き抜ける光が、

部屋一面を照らしだす。


重い空気が、外界に一斉に吸い込まれ、

生命をもつ、澄んだ風が清々しく空間を支配する。


もう、
何も恐れることはないと、導かれる様に指先をたどる。


畳みの上には、色のくすんだ花束と

冷めきったコーヒーの入ったマグカップが置かれている。


日々、

悲しみは絶頂だった。

今、こうして生きている間も絶頂を迎え続けている。


それも全部受け入れよう。


まさしく今日、


何かが変わる気がしてならない。


これが、新たな第一歩になる。


こうする事を、


昔、母と約束を交わしていたから。

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