《MUMEI》

光が玄関先で待っていた。

「ただいま。
俺、これから親と話すから来てくれる?」

光が自然と手を握ってくれると、安心する。


新しい家には初めて入る。二世帯だから広めだ。

大きめのテーブルを俺と光が二人並んで座り、そこから二、三人間を空けて兄貴の嫁の眞知子、母さん、父さん、幹裕と囲まれた。

「今更何故来たんだ。」

父さんが口を開く。

「けじめを着けに来ました。本当にご迷惑をおかけしました。」

ヤクザばりの潔い土下座をする。


「……無記名で送金してきていたわね?」

母さんが最初に口を開いた。

「学費も、治療費も、今まで負担を掛けた分返したかった。
ホストだなんて言えば受け取ってくれないような気がして。
レイが亡くなってから、俺自身を見つめ直して散々酷い仕打ちをして来た女性達の笑顔の為に働いて来たつもりだ。今日、持って来た分で最後の支払いにしようと思う。」

懐から封筒に入れて来た札束をテーブルに乗せた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫