《MUMEI》

「クロさん鬼1回もやってないっしょ!!」


「だってじゃんけんで負けてないし。」


「くそ〜!!絶対捕まえる!!」


(あぁ、それで熱くなってんのね。)


スピードやフェイント。
クロは椎名を自分と似たタイプの選手だと思っていたが、明らかに能力はクロの方が上だった。


とはいえ、鬼ごっこで全く捕まえられない。
そんなことはなかなかない。


そこでボール鬼ならではのルールが椎名を苦しめる。


パス技術に長けた選手であるクロは、どの位置に走ればパスがもらいやすいのかということをわかっていた。


それは理論ではなく、経験によるものであった。


「時間で〜す。」


「はい。終わり〜。次行くぞ次。」


(今日も捕まえられなかった…)

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