《MUMEI》
第一話:バスター
 この世の中には「掃除屋」という職種が存在する。
 警察でも解決できない犯罪者を取り締まるのが仕事であり、
 世の中の救世主的存在である。
 そんな彼らのことを世間では「バスター」と呼ぶ。

 そして、最近新聞の一面を飾る少年バスターが、今宵も裏世界に出向くのだ。


 深夜、一人の少年がとある会社に侵入した。
 防犯システムが普段は作動しているが、今宵ばかりはそうはいかない。
 システムそのものがとっくに破壊されていたからだ。
 しかし、それ以上にこの会社の社長は万全策を布いていた。
 他所から多数の掃除屋を雇っていたからだ。
 世間で言われている、「プロの戦闘集団」が自分の身を守ってくれる訳である。
 だからこそ社長は自分の命の保障はされていると高をくくっていた。
 だが、掃除屋には掃除屋のレベルの違いというものがもちろん存在する。
 特に「TEAM」を敵に回してしまったことがそもそもの間違いなのであった・・・・・

「ガキが! 死ね!」

 派手に発砲される銃弾。
 サイレンサー付きと言えども、銃弾の数には変わりはない。

 しかし、少年はたじろぎもせず銃弾をかわして反撃する。

「うわっ!」
「うがっ!」

 気がつけば掃除屋集団は壊滅状態に追いやられていた。

「なっ! お前達! 何してるんだ! たかがガキ一匹に!」
「おいおい、おっさん、掃除屋といってもその程度の奴らじゃ、
 うちとまともにやりあえるわけがないだろう?

 全身黒尽くめの少年が社長の前に立つ。髪の色も黒。
 サングラスをかけていて目の色は見えないが、その瞳も黒だ。
 その分だけ白い肌が際立つっている。そして細い。
 まだあどけなさが残る十五歳の少年は、
 小太りの中年社長のもとに詰め寄っていく。

「三人の少女を暴行した罪でお前の始末を付けに来た。
 一歩でも動けばお前の命をもらう」
 
 静かに少年は告げる。
 自分が雇った掃除屋とは比べ物にならない覇気が襲ってくる。

「ゆ、許してくれ!」
「許す? そんな調子のいいこと・・・・」

 少年は近くにあった机に目をやると、

「あるわけねぇだろ」

 机を蹴り飛ばし粉砕する。もはや本当に自分の命はないと悟った。

「すぐに警察が来る。お前はさっさと自首しろ。
 俺はこいつらの始末をつけねぇといけないからな」
 
 すでに戦意すらそがれている掃除屋達に少年は近づいた。
 そして落ちていた銃を手に取り銃口を一人の男に向ける。
 その男は間違いなくこの掃除屋のリーダー格だった。

「お前等、『ブラット』のとこの雇われものか?」
 
 中年の社長以上の殺気を放って少年は尋ねると、

「いや、違う」
 
 リーダー格の男はそれだけ言うのが精一杯だった。
 すると少年は銃を投げ捨て、

「そうか、ならばさっさと消えろ」
 
 後ろを向いて侵入してきた天井まで歩いていく。

「なぜ殺さない?」
 
 掃除屋という仕事柄、掃除屋同士で潰しあうことはこの世界の常識だ。
 特に敗者が生き残ることなど滅多にない。

「俺達の社長は殺しを認めねぇ人でな。
 特に俺達ガキにはそういうところは厳しいんだ。
 だから、絶対に敵に回るなよ?」
 
 そして飛び上がり、その場から消えるのだった。

「警察だ!」

 ドアの外から声が聞こえる。
 それを聞いて敗者の掃除屋達は一斉に消えた。
 その場にいれば、自分達も逮捕される可能性があるからである。

「隊長、あの少年は一体・・・・・」
 
 外に出た掃除屋達は隊長に尋ねた。
 そして、冷や汗を掻いた隊長は、

「二度と会いたくねぇな。あいつは「TEAM」のバスターだよ」
 
 ただそう言って、自分達の本部に帰っていくのだった・・・・・・

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