《MUMEI》

麗らかな日差しが睡眠を促進させていた。
目が覚めると3時過ぎで、1時間以上眠っていたことになる。

母さんはまだ来ていないようだ。
花が変わっていない。

最初、二郎が持ってきていたと思っていたが違うようだ。

母さんと二郎が会ったのは偶然あの一回だけだったのだ。
俺があの時気付けたから今こうして二郎が俺の横で寝息をたててくれている。

無防備に口を半開きにして、俺の膝を枕代わりにしていた。




日差しと共に溶けてしまいそうだ。

よく、一緒に寝た。
七生の鼾が五月蝿くて耳を塞いで横たわる二郎の瞼がとろとろと落ちていくのをじっと見るのが好きだった。

眠りに着いた二郎を見ながら眠った。

あの頃と寸分変わらぬ寝顔で眠っている。



あの頃は、好きな気持ちを上手く表現できなかった。

今なら、知っている。


好きなコには……





キス。

暖かい日だまりに緊張を解かれる。
自然と体を前屈みにさせられ二郎の小さな呼吸を聞く、合わせる。

色艶の良い唇は二郎の優しい匂いがした。

唇が、愛しい気持ちが、むず痒い。

ずっと、こんな夢を見ていた気がする。
出来れば目覚めないで欲しい。

二郎を一瞬だけ愛せたこの時間を。

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