《MUMEI》
一夜 妖を導く姫の
◆◇◆

 彩貴が呪符を放とうとした、刹那。

「止せ」

「!?」

 その声に驚きの色を浮かべ、彩貴は振り返る。 

 そこに佇む、巫女装束に身を包んだ、姫君。

 彼女の名は、夜桜。

 如月に、十五になったばかりだ。

 彩貴とは血縁があるが、彼女がそれを知ったのは十二の頃であった。

「‥‥‥‥‥‥‥」

 己に弓を向ける夜桜に、彩貴は怪訝な表情をする。

「邪魔をしに来たのか」

「そのやり方には納得がいかない」

 彩貴は夜桜を一瞥し、妖に向き直る。

「お前が出る幕では無い」

◆◇◆

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