《MUMEI》

そして三枝さんは、車の中で、『テレビ見たから、蝶子ちゃんが帰らないと大変な騒ぎになるの、わかるから』と言って笑った。


私は、以前皆がテレビにうつる度に私に『帰ってきて』と訴えていた姿を思い浮かべ、苦笑した。


東京駅から山田家は、一時間弱で着いた。


三枝さんは、『一応鳴らすわね』と言って、玄関のチャイムを押した。


「はいはい」


玄関の戸をガラッと開けた祖母は、私と三枝さんを見て、絶句していた。


三枝さんは、ここに来るまでの経緯を簡単に説明した。


「…上がって」


祖母の言葉に、三枝さんは無言で、私は一応『お邪魔します』と言って、玄関から中に入った。


「あなた。三枝と、蝶子ちゃんが来ましたよ」


「…そうか」


祖父は、祖母ほどは驚いてはいなかった。


私が以前山田家に連れてこられた時のように、和室に座っていて、まるで私達が来るのをわかっていたかのような態度だった。


「父さん」


「まず、座れ」


祖父の言葉に私も三枝さんも大人しく従った。


そこに、冷たい麦茶と熱い緑茶を持った祖母がやってきた。


そして、祖父は熱い緑茶をゆっくりとすすった。

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