《MUMEI》

◆◇◆

「な‥」

「違うか」

「‥‥‥‥‥‥‥」

 彩貴は口をつぐんだ。

 夜桜には今、彩貴ですら見えぬものまでもが見えている。

 今、夜桜の周りには、彩貴の目に映るより遥かに多くの妖がいるに違いない。

 夜桜は乳飲み子の頃から霊力に長けている。

 裳着の後も、それが衰える事はなかった。

 夜な夜な目を覚ましては妖と戯れるのを、彩貴は誰よりも懸念していた。

 だが夜桜は、妖と関わる事を止めようとはしなかったのである。

 むしろ、逆であった。

◆◇◆

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