《MUMEI》 二夜 狐火の燃ゆる頃◆◇◆ 鬼門に着くと、夜桜は立ち止まり妖達に戻るよう促した。 最後の一匹が見えなくなると、ほう、と息をつき暫くその先を見つめていた。 「─────狐叉」 何もいない筈の傍らに向かい、夜桜が呼び掛ける。 すると。 その呼び掛けに答えるかの如く、ゆらり、と青白い焔を纏い、七尾が姿を現した。 その焔を己と夜桜の周りに浮かべ、ぼう、と照らす。 そして、夜桜に寄り添うように彼女の足元に座った。 狐叉は夜桜が初めて見た妖である。 夜桜にとっては親族同然なのだ。 「彩貴と‥また喧嘩をしたのか」 「いや、何時もの事だ」 「姫君は本当に妖を恐れてはいないようだな」 「恐れる必要など無い」 夜桜は微笑を浮かべ、白い毛並みを撫でる。 狐叉は目を細め、白い七つの尾をゆるりと靡かせた。 ◆◇◆ 前へ |次へ |
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