《MUMEI》
明石 珠緒の高校生活
「良い度胸だなあ、この俺の名前を知らず、頭上に毛を落とすだなんて」

地肌に爪を立てられ痛い。

「ごめんなさい、
僕……こんな体質だから人と関わらないようにしてたんです、だから同級生の顔もまだよく分からなくて……」

泣きそうだ、泣いたら、発毛してしまう。

我慢だ我慢……!



「なあ、毛、高ぶると生えるの?」

「……はい。」

その答えに満足したのか、氷室君は前髪から手を離してくれた。










と、思ったのに。

氷室君の離された手は俺の首だった。

「…………ッ」

声が出ない。
誰も助けを呼べない。

氷室君は何も話さずに冷たい目線でただ、僕の首を絞めている。




怖い、怖すぎる。


鬼か、阿修羅か。

いや、彼等のがよっぽど人間らしいじゃないか。

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