《MUMEI》
第六話:時枝修
「じゃあな、翔。」
「おつかれさん!」
「オウ! おつかれさん!」

 運動靴の紐を結び直し、翔は部室を後にする。
 さっき届いたメールに書かれた文字は「先に帰る」。
 短いのは相変わらず奴らしいと思いながら翔は走った。
 送られてきたのはほんの数秒前なら、きっと待っているはずだ。

「修!」

 翔は大声で呼び掛ける。
 そして剣道用具一式抱えたメールの送り主は翔に気づくと、

「遅い」

 その一言を言い放った。
 生まれたときからの幼馴染、幼稚園からずっと一緒だった親友、
 時枝修は木にもたれ掛かって待っていた。
 時枝警視総監の息子である割には真面目に勉強している優等生。
 素通し眼鏡はその象徴のよう。
 身長も伸び盛りなのか、もうすぐ180に届きそうだ。
 そして、修もバスターなため、快の家に下宿中である。
 しかし、彼の家は快の家から数百メートルも離れてはいない。
 任務がしょっちゅう自分の親に持ってこられるため、
 快の家に下宿した方が何かと都合がいいのであった。
 そして孝行息子でもあるので、休みの日になれば母親にのみ顔見せにぐらいは戻っている。息子曰く、

「父親に見せる顔など必要ない」

 とのことだ。決して父親と喧嘩している訳ではないのだが・・・・
 スポーツも幼いころから続けている剣道で全国準優勝の腕前である。

「悪い。翡翠の奴が告白されていて快が邪魔に入ってたからさ」

 苦笑しながら翔は答えると、

「そういうことか」

 快と毎回学年トップを競っている修に余計な説明など要らない。

「それより、白達はどうしたんだ? 一緒じゃなかったのか?」
「ああ、あいつなら空手部だ。紫織を迎えに行ったよ」

 気が重い感じのする答え方に納得するものは、
 箒星の常識を知っているもの全てであった。

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