《MUMEI》

◆◇◆

 ざあ、と一陣の風が吹き抜けた。

「‥‥‥‥‥‥‥」

 只の風ではない。

 彩貴ですら気付かぬ程に微かな妖気を、夜桜は感じ取った。

 そして、目を開ける。

「眠っていたのか‥」

 まだ、夜は明けていない。

 藍の空が、彼方へと続いている。

 徐に起き上がり髪を束ね、既に目を覚ましていた狐叉を引き連れ衣を翻した。

◆◇◆

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