《MUMEI》
三夜 百鬼夜行の刻
◆◇◆

この夜、2人の影が鬼門の両側に待機していた。

その影の片方は、夜桜。

もう片方は彩貴である。

夜桜の傍らでは、狐叉が気配を消している。

だがそれを知るのは、夜桜だけだ。

尤も、彩貴は気付いているのかも知れないが。

「彩貴」

 そう呼ばれた若人は、返事の代わりに目だけを彼女に向けた。

◆◇◆

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