《MUMEI》

「それで、その結果を蝶子に知らせたってわけ?」


「探偵を雇ったとは聞いていませんでした」


私は慌てて説明したが、三枝さんの祖父母に対する…特に、祖父に対する想いが…


爆発した。


「大体、父さんが全部悪いのよ!

昔から姉さんや兄さんばかり可愛いがって!

そりゃ、私は二人ほど優秀じゃなかったけど!でもね!

亘も、私の子供も孫でしかも男なのに、蝶子ばかり可愛いがって!

だから、亘が優秀な子供だったらきっと亘を…私を見てくれると思って頑張ったのに!!

一回失敗したくらいで『亘の事はもういい』って見放したりするから!

だから…

だから、私はアゲハの優しさが嬉しくて…

全部、全部父さんのせいなのに!

ヒドイ!

ヒドイわ! …っ…」


私も、祖父母も、泣き崩れる三枝さんを、ただ無言で見つめていた。


私は、何を言っていいかわからなかった。


ただ、明るく振る舞っていた三枝さんが、今まで辛い想いを抱えていた事だけはわかった。


隣にいる三枝さんは、ただの…


親の愛情に飢えた可哀想な子供だった。


『寂しかったの』


私は以前亘君が言っていた三枝さんの言葉を思い出していた。

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