《MUMEI》

(あれは、…亘君達に相手にされないのもあったかもしれないけど、おじいちゃんにっていうのが、一番だったのかも…)


私は、もし自分が父に相手にされなかったらと想像して


…ゾッとした。


すると、そんな三枝さんを見つめて固まっていた祖父母が動いた。


祖母は、三枝さんの背中を撫でた。


そして、祖父は一言…


『違う』とポツリと言った。


三枝さんはそんな祖父を睨みつけた。


「本当に、違うのよ。…お父さんの話を聞いてあげて、ね?」


祖母は優しく三枝さんを抱きしめた。


(…私、聞いてもいいのかな…)


多分、ここから先は、私が生まれる前の過去の話だ。

しかも、かなり深刻な内容の。


(一応、訊いてみよう)


「あの、すみません…」


私は恐る恐る口を開いた。

多分…他の三人の頭からは、私の存在が消えていたようだ。


三枝さんも祖母も…珍しく祖父も顔が赤くなったから。


祖父がわざとらしい位大きな咳払いをした。


「どうした?蝶子」


「…私、いてもいいですか?」


私の質問に、三人が顔を見合わせた。


最終的な判断は三枝さんに委ねられた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫