《MUMEI》

「もう一番知られたくない事は知られてるし、蝶子が大丈夫なら、いてもいいわよ」


「はぁ…」


私は部屋の時計を見つめた。


時間的にはまだ余裕があった。


(そういえば、まだお昼食べてなかった…ような)


グ〜ッ


(わっ!)


空腹を自覚した途端に、正直過ぎる私のお腹が鳴ってしまった。


プッ


三枝さんが吹き出し


クスクス…


祖母が笑い出し…


祖父は、震えながら笑いをこらえていた。


そして、私達四人は、とりあえず昼食を食べる事にした。


『丁度いただきものがたくさんあったの』と言う祖母の提案で、私は夏野菜の天ぷらとそうめんを用意した。


「いただきます」×4


天ぷらのサクッという音と、そうめんのズルズルという音だけが響いた。


『食事中は静かに』が、山田家の常識だったから。


「ごちそうさまでした」×4


片付けをしていると、三枝さんに『おかげで緊張が解けたわ』とお礼を言われた。


(お腹が鳴っただけだっただけなんだけど…)


私は、赤くなりながら、『いえいえ』と言った。


「言っておくが、お前を可愛くないと思った事は無いぞ」

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