《MUMEI》

再び和室に集まると、祖父は三枝さんにすぐにそう言った。


「嘘!」


「嘘じゃない!」


「じゃあどうして亘を『どうでもいい』みたいに言ったのよ」


「あれは、『もうそんなに頑張らなくてもいい。無理するな』って意味で言っただけだ」


「わからないわよ!」


「親子ならわかれ!」


「開き直らないでよ!」


(え〜と、つまり…)


私は目の前で次々に交される祖父と三枝さんの会話を頭の中で整理した。


「あの人は、言葉が足りないのよ」


私の横にいる祖母が囁いた。


(孝太みたいなものかな…)

『言わなくても相手がわかってくれる』


だから、口下手になる。


「でも、おじいちゃんて、先生だったんですよね?」

「昔は、それでも大丈夫だったのよ。あの人、勉強教えるの『だけ』は得意だったし…」


(だけって…)


祖母の言葉に私は苦笑した。


数分後。


「もう!悩んでた私が馬鹿みたいじゃない!」


三枝さんはそう叫んでいた。


「悪かったよ…」


威厳がすっかり無くなった祖父はポツリと謝った。


そして、私と三枝さんは山田家を後にした。

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