《MUMEI》
五夜 黒き手毬の如し
◆◇◆

「お前は‥向こうに帰らなくていいのか」

 夜桜が問うと、その毬のような妖は、ぽてぽてと跳ねる。

 夜桜には何を言っているのかが分かるらしく、しきりに頷く。

「私と暮らすか?」

 ぽてっ、ぽてっ。

 嬉しいのか、妖は先程よりも高く跳ねた。

 そして今度は狐叉の背に飛び乗ると、そこでも同じく跳ね続ける。

 夜桜は思わず小さく笑った。

 未だ一睡もしていないというのに、彼女は疲れたそぶりなど少しも見せないのだ。

◇◆◇

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