《MUMEI》
迎え
「もしかしたら、太郎さん達がいるかもしれないわね」


「…ですね」


東京駅に着いた私と三枝さんは、そんな会話をしながら新幹線の切符売り場へ向かって歩いていた。


予想通り、三人の姿が見えた。


…しかし、予想外の人物もいた。


「母さん、やっと来たぁ!」


「亘?何でいるの?」


三枝さんは、ホッとした顔の亘君を不思議そうに見つめた。


「蝶子ちゃんが無事に帰ってくるまで一緒にいてもらいました」


父の説明に、三枝さんは苦笑した。


「まるで人質ね。信用無いのね、私は」


「あなたがというより、山田家がですけどね」


「父さん! もう大丈夫なの。だから、三枝さんを怒らないで」


すると、父は私をギュッと抱きしめた。


「だって…心配だったんだ」


「ごめんなさい。…もう大丈夫だから」


駅の中で抱き合う私と父を…


バリッ!


無言で引き離した人物がいた。


「な〜に、してるん、ですか!?」


「とっ…」


グイッ!


突然現れた俊彦が私を引っ張った。


「…親子のスキンシップを邪魔しないでくれないかな」


グイッ!


父も私を引っ張る。


「痛い!」

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