《MUMEI》

「「あ、ごめん!」」


私が悲鳴を上げると二人は同時に腕を離した。


「どうして俊彦君がここにいるの?」


「蝶子が変な電話の切り方するから気になって迎えに来ました」


華江さんの質問に、俊彦は背筋を伸ばして答えた。


そして、さりげなく私の肩を抱いて、自分の方に引き寄せた。


悔しがる父を、華江さんがなだめる。


「心配したんだからね」


「ごめんね、でも、大丈夫だったから」


私の言葉に俊彦はホッとしたように笑った。


(また心配かけちゃったな…)


私はもう一度小声で俊彦に謝った。


「いいよ」


俊彦は、私の髪を撫で、…

三枝さんを見つめた。


三枝さんは、最初俊彦から目を反らしたが、深呼吸をして、俊彦を見つめた。


「今まで、…



ごめんなさい、いろいろ」

「エ…、三枝さん。今は、大丈夫なんですか?」


俊彦の質問に、三枝さんは目を丸くした。


「…えぇ。

蝶子ちゃんのおかげで、両親と…父と和解できたし。
亘もいるし…

幸せよ」


「そうですか。良かった」

俊彦が笑顔を向けると、三枝さんは『そんな顔は向けられたら、また誤解するわよ』と苦笑した。

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