《MUMEI》

◆◇◆

 それは、ぱちくりと目をしばたかせ、辺りを見回す。

 夜桜も狐叉も眠っている事に気付き、徐に己を包んでいる手から抜け出すと、ぽて、ぽて、と歩き出す。

 恰も毬のような動きをし、それは気の向くままに漫ろ歩く。

「‥‥‥‥‥っ?」

 どさ、と何かがおちる音がし、夜桜は目を開けた。

「黒手毬‥?」

 見れば、文机から落ちた草子の下に、何やら黒いものが、じたばたともがいている。

 それが何であるのか、夜桜にはすぐに分かった。

◆◇◆

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