《MUMEI》
不機嫌な理由
「…怒ってる?」


「違う。心配してただけ」

「でも、何か、イライラしてない?」


「それは、…昨日も今日も蝶子とイチャイチャできなかったから」


そう言うと、椅子に座っていた俊彦は、ベッドに座っている私の隣に腰かけた。

(それだけ…かな?)


私が以前山田家に軟禁されていて、帰ってきた時も、俊彦は心配していたが、こんなにもイライラはしていなかったような気がした。

「…何かあったの?」


「紅白コンビに彼女ができた」


「え!? 勇さんにも!?」

「祐介の彼女、知ってたの?」


私達はお互いに驚いた。


そして、私は俊彦に、テーマパークでの祐介さんと歌穂子さんのやりとりを


俊彦は私に、勇さんが同級会で久しぶりに再会した元学級委員の女性と付き合い始めた事を


それぞれ、説明した。


「歌穂子ちゃん、今は夏休みだから『白石肉屋』でバイトしてるんだ。
未成年だから、まだ『やきとり 圭介』では働けないし。

学級委員の、斉藤律子(さいとうりつこ)さんは、OLらしいけど、今はお盆休みだからって『赤岩』手伝いに来てるし。

どこ見ても、ラブラブで寂しかったんだよ〜!」


俊彦はギュッと私を抱き締めた。

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