《MUMEI》 第十一話:お出迎え昼休みというものは五十分しかない。 その間に少しでも睡眠はとりたいところだが、当然クラスの連中はそうさせてくれない。 むしろ、一番の原因は自分の父親のせいではないかと修は思っている。 窓の外をいつものようにボーっとして眺めていると、 パトカーが正門の前に堂々と止まるのだ。 「パトカー? 何か事件でもあったのか?」 高校から修と同じクラスメイトになったものは知らない。 快が盛大な溜息をつくのと、翔がやれやれという顔をするのと、 白真がきらきらした表情を見せただけで分かるものは、長年の付き合いである証拠だ。 「時枝修殿! 篠原快殿! 警視総監がお待ちであります! 直ちに出頭いただきたい!」 「かわいそうに」という言葉はこのためにある。 修は自分の父親が警視総監であることを、これほど謝罪したい気持ちにさせることはないと思った。 そして、やはりバスタークラスは騒ぎ始めた。 「快君! 何かやらかしたの!?」 「修! お前が付いていながら何してたんだよ!」 「白、お前だろ、何かやらかしたの」 「いや、翔のミスとか?」 クラスの面々は質問攻めにする。 半分はからかいと冷やかしだが・・・・ 「お前の親父さん何とかならないのか?」 快がダレながら尋ねるが、 「馬鹿につける薬はまだあっても、大馬鹿に飲ませる毒薬はねぇよ」 「だな・・・・」 それを聞いて快は大地の方を見ると、 「ああ、夕飯作って待ってるからさ。ちゃっちゃと行って来い。 ノートは翡翠と紫織に頼んどけ」 次の授業は数学。 テスト前の授業にTEAM全員で警察署に行くなど自殺行為だ。 それを少しは考慮してか、今日は快と修だけの迎えにしてくれたんだろう。 おそらく部下の警察官が・・・・ 「ちょっと待てよ! 俺も行くぞ!」 「俺もついでに行く」 白真と翔も言う。おそらく好奇心と勘という何かが働くからであろう。 「大体、快ちゃんと修ちゃんだけ授業サボれるなんてずるいぞ!」 「だよな。こんな面白いこと久しぶりだしな!」 前言撤回。入学以来つまらない任務ばかりで、そろそろ大きなことをやりたくなっただけだ、この二人は。 しかし、止めても無駄だとわかっているので、 「じゃ、いくか」 次の瞬間、校舎の三階から飛び降りる四つの影が現れた。 窓を見ていたものは茶を噴出したり、あんぐり口をあけたり、失神するものまでが続出した。 そしてその騒ぎも束の間・・・・ 「チャイム鳴ったぞ! 席に座れ!」 担任の大原の名物、チャイム代わりの「声着」が飛び出す。 それを聞いて座らないものはまずいないが、今日は四つの空席がある。 「ん? あの四人はどうした?」 「任務ですよ。今日は警視庁から呼び出されましたから」 「・・・・・・時枝か」 大原は溜息をついた。元自分の教え子である時枝警視総監を思い出しながら・・・・ 前へ |次へ |
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