《MUMEI》
第十二話:ブラッドの名
「よくきたな、高校バスターの諸君」
 
 警視庁警視総監、そして修の父親である時枝脩三は、
 相変わらず厳しさの中にも優しさがある表情で快達を迎えた。
 しかし、息子の修は文句をたれる。

「息子の授業を何だと思ってるんだ? この馬鹿オヤジ」
「学校の授業を受けなければならないほど勉強が苦手になったのか?」

 だてに自分の父親をやってない。
 文句を有能なものにたれることほど勝てない喧嘩もないのだ。

「間違いなく世の中の教育機関を敵に回したな」
「ああ、親の言葉とは思えねぇが」
「さすが警視総監」

 快、翔、白真は思ったままを遠慮なく口に出す。

「お前達を呼んだのは他でもない。白、親父さんからの依頼だ」
「親父が?」
 
 白真はきょとんとした。白真の父も「TEAM」の幹部だ。
 しかし、いつもどこかに飛ばされているので、本社に戻ることなど年一・二回あればいいところである。

「ああ、『ブラッド』という組織は聞いたことがあるだろう?」

 その言葉に四人全員に衝撃が走った。
 知るも知らぬも、彼らにとっては忘れもしない掃除屋である。

「まさか、そいつらと一戦やれってことか?」
「そういうことだ。もちろん断っても構わないがな」

 珍しく任務を選ぶ権限を与えられた。
 それについて修は意見する。

「構わないって、バスターの依頼は絶対だろう。
 警察としても立場が悪くなるんじゃねぇのか?」

 警察と掃除屋は互いに協力関係にある。
 しかし、実質のところ、掃除屋のほうが権力が上だともいわれている。
 警察に手出しできない事件を掃除屋はこなさなくてはならない。
 その任務を提供するのが警察であり、サポートもしなければならないのだ。
 特に一バスターの依頼となれば、世の中の信頼を失わないためにも警察が動かないわけにもいかない。
 見捨てれば、「警察」という組織を掃除屋が潰す恐れもあるからだ。

 ただし、それがこの警察庁で起こらない理由はただ一つ。
 「TEAM」の名がそれをさせないのである。

「うちの親父なら平気だ。どうせ、救援を求めてるんじゃないんだろう?」

 白真は面白くなさそうに言った。
 一度くらいくたばりかけた方がいいと思っているからだ。

「ああ、間違ってもそれはないな。
 ただ、あいつも多忙だからな。
 自分の弟子達にこの任務を押し付けてやろうというところだろう。こいつの支払いと一緒にな」
「持って帰らせていただきます!」

 白真は心の底から侘びた。
 自分の父親が警察に遊び金を払わせるなどとんでもないことだ!
 国民の税金を何だと思ってる!と心の底から激怒した。
 それを快が白真の手からとり、

「白、こいつはうちの親父に払わせたらいい。
 それより、時枝警視総監、今回の任務内容は親父のところに送ってあるのでしょう?
 それをわざわざ俺達を呼び出したのには訳があるんですよね。話していただけませんか?」

 快が真面目な顔をして尋ねると、
 時枝警視総監は四人の表情を見ながら話しはじめた。

「正直、お前達をこの件に関わらせることに俺は反対だ。
 バスターといえども、お前達はまだ高校生だ。
 学生らしく勉強に明け暮れた方が普通はいいだろう」
「教育機関を敵に回す奴が正論か」

 修が思いっきりツッコミを入れる。

「だが、お前達は並大抵のバスター達に比べて卓越した才と力をもっている。
 あいつはそれを見越してこの依頼を持ってきたんだ。よく考えてくれ」

 そして手渡された任務内容を見ながら、
 四人はパトカーで学校に送られることになった。

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