《MUMEI》
第十三話:逃げ道は失くなった
 学校に戻った快達は授業に身が入らなかった。
 だが、時間は経ち放課後になり、
 部活に出る元気もなく四人はTEAM本社に帰ることにした。

「『よく考えろ』か。俺は面白そうだからいつでも受けようと思ってるんだが」

 上を向いていても、器用に電柱を避けて歩きながら白真は答える。

「白らしいな。まっ、俺もそうしようとは思ってる。断る理由はないが・・・・」

 快はそれ以上言葉がつむげなかった。
 全員考えることは同じだった。
 「ブラッド」は自分達に生まれて初めて死の恐怖を与えた掃除屋だった。
 あの事件からもう何年も経っている。
 あの幼かった自分達は強くなった。
 白真の父親がありえないレベルの修行をつけてくれた。
 それに耐えて今があるというのに、どうもいつもの冷静さを快は保てなくなっている。

「快、俺はお前が隊長ならこの任務を受けようと思っている。
 だが、お前に負担をかけたくないことも考えておいてくれ」

 翔は周りのことを常に考えてくれている。
 それで何度友人達が救われて来たかも数え切れない。
 その気遣いに快は感謝した。

 だが、それを壊すものは身近にいるものだ。
 翔達と玄関で別れ、それぞれの思いを巡らせるなか快は食堂に入ると、

「よう、帰ってきたか」

 大地が夕食の仕込みを始めている。
 今日は豪勢なメニューということは匂いで分かる。

「今日は誰かの誕生日だったか?」

 何かに託けて騒ぐのはこの掃除屋ならでは。
 イベントを無理矢理創ってでも騒ごうとする

「いや、お前達の最後の晩餐作りだよ」

 それが全てだった。
 どれだけ自分が悩んでも意味がないこともある。
 快は覚悟を決めると、

「親父のところに行って来る・・・・」

 そう告げてとぼとぼと歩き出した。
 任務を受けるという前に最後の晩餐を作らせているということは、
 もう逃げ道はなくなったということだ。

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