《MUMEI》 第十五話:全ての始まりの日社長室から再び食堂に戻った快は、最後の晩餐に手をつけ始めた。 もちろん、修・翔・白真も一緒である。 そしてさすがは長年の付き合いなのか、好物のビーフシチューを作ってくれるあたり、 ここの悪友コックは気が利くやつである。 「ブラットか・・・・。思い出深いな」 大地が水を注ぎながらに言うと、 「ああ、最悪の敵だよ」 今でも忘れはしない、あの日の出来事を買いは脳裏にめぐらすのだ。 「快、あくまでも冷静にな。お前が取り乱すと全滅するおそれもあるんだからな」 修は真剣な表情をして快に言う。 隊長が弱気では士気にかかわってくるからだ。 しかし、それは無用といわんばかりに快も答える。 「親父にも言われたよ。だが、お前達は逆に竦むな。 俺達は強くなった。それだけは事実なんだ」 それは夏の暑い日。小学二年生だった快達の、 初めて命の危機にさらされた任務であった・・・・ 「快ちゃん! 遊ぼう!」 外から活発な女の子の声が木霊した。 その声を聞き、二階の窓が開けられる。 そしてその部屋の主は時計に目をやった。まだ朝の七時。今日は日曜日。 いかに少年が天才であっても、小学二年生にしては体力がであったとしても、眠い日は眠いのである。 「翡翠、まだ七時だろう・・・・」 黒目黒髪、白い肌、どんな女の子でも、必ず彼を見れば好感を抱かずにはいられない容姿。 幼いながらも落ち着いている少年は、朝早くからの来訪者に起こされた。 「もう七時だよ! 白ちゃんも修ちゃんも起きてくれたよ!」 ダークブラウンの髪に茶色の目。白い肌には人一倍傷跡を作っている。 どんな男の子でも、必ず彼女を見ればお転婆だと思わずにはいられないだろう。 しかし、可愛さはその辺の女の子の比ではないことも確かだった。 翡翠は二階の窓まで飛び上がると、靴を桟の上に乗せて快の部屋に侵入した。 「お前な、不法侵入で父さんに言いつけるぞ」 「おじ様は起こして良いって言ってくれたもん」 不法侵入を認める父親はこのころから健在である。 「ほらほら、早く着替えてよ! 皆待ってるんだから!」 翡翠は快を囃し立てるのだった。 前へ |次へ |
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