《MUMEI》

◆◇◆

 それを見つけたのは、朱雀門のすぐ手前だった。

 焔を纏い、しきりに警戒している。

「大人しくしろ」

 呪符を手にし振り上げた彩貴の腕を、夜桜が制した。

「お前‥」

「手出しをするなと言った筈だ」

「ならばどうしろと‥」

「警戒を解くしか無い」

「そんな事で‥」

「どうしていつもそうなる」

「俺は只‥」

「妖は悪霊とは違う」

「‥‥‥‥‥‥‥」 

 彩貴は朱々と燃える焔を見つめ、黙り込んだ。

 その妖は、些か怯えているようにもみえる。

「ならお前が何とかしろ。俺は他の道を見回って来る」

「ああ」

 夜桜が頷くと、彩貴は踵を返した。

◆◇◆

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