《MUMEI》

図書室なんて、初めて入った。


取りあえず、情報といったら本しか思い浮かばなかったおれは、
蓬田を誘って図書室を訪れた。



勉強してる3年生が1・2人いるだけで、先生も不在だった。



「…何から手つけたらいいんだろ…」



そう言いながら棚の間をゆっくり歩く蓬田。



「…わかんね」



おれも答えながら後に続く。




「…あ、―…あのね」



思いついたように蓬田が振り返る。



「…今朝、断ってきたよ、―…『吉田ゆりちゃん』」


「―…あ、」



…そっか、



おれの代わりに、蓬田―…



「…私のこと、彼女だって勘違いしちゃったみたい」



蓬田はそう言って、困ったように苦笑いした。



「―…悪かった、おれ―…」



嫌な役、押し付けちまった…

蓬田は、謝るおれに微笑みかけて、ふざけるように言った。



「色男はつらいね!!」



本棚に目を戻した蓬田は、おれが何かを言う前に、本を一冊取り上げた。



背表紙には、『脳科学』の文字。



「…こういう系統から見てこっか!」



「…おう」



情報探しが、始まった。

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