《MUMEI》
言動 〈私〉
図書室での椎名くんのおかしな言動の理由が、やっと分かった。



「…おれに、協力してくんねーか?」



そう言った椎名くんの目は真剣そのもので、



ああ、彼は本当に心から空手が好きなんだ。



―…そう感じた。



いきなり、「空手!!」と叫んだのも、
私に前屈させて、身体が鈍ってないか確認したのも。



…ぜんぶ、空手がしたくてたまらないが故の言動だったんだ。



椎名くんは続けた。



「…少しでいいんだ。きつい練習しろとか言わない。
柔軟とか、簡単な筋トレだけで―…」



その椎名くんの言葉を遮るように、私は答えた。



「やるよ」



椎名くんが、きょとんとした顔を向ける。



「…やるよ、明日から。
きつい練習でも、なんでも。
―…ちゃんと出来るかはわかんないけど…」



私が言うと、



椎名くんは、笑顔になった。



ぱっと花が咲いたような、無邪気な笑顔。



「…ありがとう!!」



椎名くんはそう言って、私に頭を下げた。

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