《MUMEI》

翌日、私はメールの音で目を覚ました…。




“吉沢さんからだ!!”




┏━━━━━━━━━┓
┃おはよう。    ┃
┃今日の夜、早めに ┃
┃そっちに帰る。  ┃
┃一緒に外で、飯でも┃
┃食えないかな?  ┃
┗━━━━━━━━━┛




私は、漢字に変換するのも忘れてすぐ返信した。




┏━━━━━━━━━┓
┃わかった。    ┃
┃こっちについたら、┃
┃またれんらくちょう┃
┃だい。まってる。 ┃
┗━━━━━━━━━┛




やったー!!




きっと、このメールは奥さんの目を盗んで打ったんだね…。




…ってまた、すぐにブルー入るな!自分っ!!




深いことは考えない!!
今日はデートだ(笑)!
それでいい!




なんて朝から1人で、喜怒哀楽…。




“よしっ!
今日も、いい天気。
せっかくだから、久しぶりに買い物でも行くか!
そうだ!今日のデート服も買ちゃおう!”




私がよく行く店は、駅裏の小さなテナントがたくさん並んでいるところ。




来るたびに、いくつかの店は無くなってて、新しい店に変わっちゃってるんだよな〜。




気に入ってた店が無くなっちゃった時は、イヤだったけど、新しい店が出来るのは嬉しい。




『あっ!また新しい店オープンするんだ…。』




┌─────────┐
│来るべき来月!! │
│待ちに待った最高な│
│“雑貨屋”堂々の │
│オープン予定!! │
│乞う、ご期待っっ!│
│(ひやかし大歓迎!)│
│遊びに来てや〜!!│
└─────────┘




“何!?この看板…。
また変わった店が出来るんだな〜。”




『おう!咲良やんけ!
おはようさん。』




声をかけてきたのは、ももただった。




『…おはよう。って…あんた、またその格好…。』




ももたは、また昨日の“変人スタイル”になっていた…。
まさか!?
これが、ももたの私服…。




『しゃーないやんけ!
昨日に引き続き、今日も俺はホコリまみれにならなあかんねん。
完全防備やないと、デリケートな俺は、ホコリアレルギーが出るやろ!?
分かったか!?』




『ふ〜ん。
まだ、引っ越しの片付け終わってなかったんだ…。
…で、その持ってる脚立とペンキは何に使うわけ?』




『いや!家の片付けは終了や。今からは、店の外壁を塗り替えんねんっ!』




『…店!?』




『そやっ!ここ俺の店。』




ももたが指差したのは、紛れもなくオープン予定の雑貨屋だった…。




『えっ!?
ももた、店やんの!?
ってことは、あんた店長?じゃなくて…社長!?』




『そやっ!
俺の店やから俺が社長や。スゴいやろ(笑)!?』




『…ももたが社長……。
…信じらんない……。』




『…まぁ、立ち話もなんやから、店あがっていき!
そんで掃除して、ペンキ塗るの手伝って、段ボールの整理さしたるわ!』




『………全然イヤ。』




『遠慮しいなや。
はよっ!行くで!!』




ももたに、言われるがまま店のオープン準備を手伝うはめになった…。




25歳…。
もう自分で店を経営したり出来ちゃう年齢なんだ…。



なんて、しみじみ考えた。



吉沢さんの25歳
[父親になる。]




ももたの25歳
[社長になる。]




百瀬咲良の25歳
[……………。]




それぞれの25歳は、大きく変わり始める…。




私の空欄には、なんて文字が入るんだろう…。

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